医業「診療所を移転する?!冗談でしょ」

沖縄県中部にあるR先生は、某薬品会社のコンサルタントからの紹介でした。収益力が悪く経営が苦しいので、どうにかならないかと相談がありました。

早速、税理士と財務担当者が診療所を訪ねました。 財務諸表はすべてきちんと揃っているものの、肝心の売上が低く設備投資過剰です。R先生は周りの人に勧められるままに、診療所の場所も、設備も決めてしまったのが、こういう形になったのだと言われました。R先生の元から沢山の資料を持ち帰り検討することにしました。

収益性の悪い部門や過剰な設備の実態が余計に経営を苦しくしていました。

さらに税理士は財務担当者を先に帰し、診療所内部をくまなく見て回り、次に診療所周りを歩き、次に診療商圏と思われる地域をゆっくりと見てまわりました。

その後、数日かけて財務資料や他医院との比較検討など行い、どこがどのようにマズイのかを熱心にリサーチ検討していきました。

後日改めてR先生のもとへ、税理士が行きました。

税理士はR先生に会うと開口一番「R先生、ここを移転しましょう!」と言いました。

R先生:「エッ!!診療所を移転する?!山内先生冗談でしょ!?」

解決策診療圏を変えずに移転する!諦めかけたその時、偶然の出会いが。

診療圏を変えずに従来と同等の物件が簡単に見つかるはずもなく、物件探しは難航しました。しかしながら、R先生がそのまま、現在の場所で事業を続けることは、ますます経営を悪化させてしまいます。何とかこの窮地を打破するためにも、移転させなくてはなりません。 足を棒にするまで、診療圏内の地域を探しました。ダメで元々と、実際に営業を行っている店舗やオフィスにも心当たりはないでしょうか?と飛び込みでお伺いしました。

一方で診療圏を変更して、クリニックモールに入居する案も並行して動きました。どれがベストな判断なのか、選択肢は多いことは良いと考えました。

R先生に出来る限り、必要以上の負担を強いることなく、経営をコンパクトにして、R先生本来の専門技術を一点集中で生かすことが、経営を改善させるポイントだと考えました。諦めかけ始めた頃、喫茶店を廃業するから譲っても良いというオーナーに会えました。あちらこちらにお声かけしていた時に、喫茶店に入り世間話をしながら、近隣の事情や現在の店の状況などもお話がきけました。こちらの意図も了解したうえで、現在の店舗の廃業の仕方についても相談に応じてきたので信頼関係が築けていて良かったと思いました。

現在の診療所に比べて格段に面積が小さくなることに、とても強く難色を示されたR先生は、なかなか移転に決心がつきません。それに加えて移転後の内装設備費用の新たな不安がありました。

税理士はその点も当初から織り込み済の移転スキームでした。R先生の財務資料を分析した際に金利の高い借入先をいくつかを低金利で一本に絞り、リース機材をすべて買取り、新たな金融機関から長期の融資に変更、不採算エステ部門の閉鎖など、あらゆる施策を同時期に実現させるのが、移転の成功要因に繋がると判断していたからでした。

外観は以前の診療所が良かったのかもしれませんが、立地が格段に良くなり、財務の改善を図ったR先生の診療所は目に見えて経営改善していきました。
移転から5年後、R先生から将来を見据えて隣地に土地を購入したいと相談がありました。
5年前、「冗談でしょ!?」と目を丸くして言ったR先生の顔は、キリリと凛々しく真剣なまなざしでした。

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